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佐渡芸能の歴史

神楽解説:山本修巳  
(郷土史家、佐渡市文化財保護審議会会長、「佐渡郷土文化」主宰)

神前の舞い、神楽


佐渡の神楽は、神社の例祭などにおいて神主や巫女らによって神前で舞われます。
現在は舞われなくなった演目も含め次のようなものがあります。

1.男の舞―神主の笛にあわせて舞う。
演目―猿田彦、三番叟、神明神楽、二十四孝、養老の舞。大黒の舞、恵比須の舞、剣の舞、榊の舞、鈿女の舞、弓の舞、稲荷の舞、玉の舞、紅葉狩、土蜘蛛の舞、鳥の舞

2.巫女の舞―神主の妻や娘が笛にあわせて舞う。
演目―岩戸神楽、三宝神楽、五段神楽、継神楽

3.男と巫との舞―神主とその妻や娘の巫女が対になって舞う。
演目―陰陽の舞

こうした神楽は、いつの祭日にも、演目が決まっているわけではありませんが、一般に岩戸神楽が最初で、三番叟や猿田彦は初めの方で、恵比須舞や大黒舞はあとの方で演じられます。

佐渡の神楽は、信仰系神楽、能楽系神楽、民俗系神楽の3つの特徴があります。


信仰系神楽-神楽は愛知の熱田神宮からやってきた?


佐渡の神楽は、神楽のはじまる前に詠まれる詠詞に、愛知県の熱田神宮の詠詞とほぼ同じものがあります。
ただ、名称は異なっています。
佐渡の猿田彦は熱田の「矛の舞」、榊の舞は「木綿四つ舞」、三宝神楽が「日蔭の舞」、五段神楽が「かづらの舞」、継神楽が「鈴竹の舞」、神明神楽が「神がかりの舞」、矢車が「宴楽の舞」とされています。
これらの詠詞は『古語捨遣』をもとに作成されており、佐渡の神楽の詠詞とは異なっています。
佐渡の神楽の詠詞と熱田神宮の詠詞との関わりはわからないが、佐渡市羽吉の羽黒神社には、熱田神宮の詠詞の名称とほぼ同じ詠詞があります。
これらの神楽は、男の舞と女の舞とがあります。女の舞は巫女舞とよばれ、今でも舞われるが男の舞は多く伝承になって、あまり今では舞われなくなりました。男の舞も巫女の舞も、単純な所作の繰り返しが多く見られます。

男の舞は、猿田彦、剣の舞、榊の舞で、猿田彦は赤い天狗の面に茶の狩衣、金色の鉾をあげたりおろしたりして床を踏む所作。
剣の舞は、立烏帽子、鉢巻、袴に券を持ち、四方で太刀をふりおろす所作。
榊の舞も烏帽子と袴姿で、四隅を払う所作。
一方、巫女神楽の方は、いずれ天冠に白の水千、緋の袴姿、岩戸神楽は、白く幅広い袖を、右側の袖を左側の手で、左側の袖を右側の手で前面に広げるような所作が中心。
三宝神楽は、右手の鈴をならし、左手の袖を巻いたりする所作。
神明神楽は、右手の鈴をならして、まわりながら舞う所作。
五段神楽はご弊を左から右に立てたまま動かし、ゆっくりまわる所作。
継神楽は左手に扇子を片手でまわしながら鈴をならす所作。
矢車は両手の扇子を矢車のように早くまわす所作。

これらの演目は、いつも選択して舞われます。


能楽系神楽・民俗系神楽


佐渡は昔から能楽がさかんで、能楽系神楽は神職によって創作されたものです。
能楽的なものは、謡曲の演目と同じ紅葉狩、土蜘蛛で、「四方がため」の所作を取り入れたもので摺り足の舞です。
また、民俗系神楽は、縁起的なものを笛にあわせ、所作を創作したものです。
恵比須舞では鯛を釣る所作。
大黒の舞は、大きな袋から実際の菓子を撒く所作が特徴です。

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